第3回 CLDA 2020 結果発表

審査員総評

審査員

浅井裕雄

建築家 裕建築計画代表

第3回のテーマ「出会い」はパンデミックによって、特別なテーマとなりました。グランプリーの共創空間「CONERU」と金賞の「土に還る」はモノではなく、プロセスをもって、街や人の気持ちに直接伝わってくる。ソフトの提案ともいえるが、人やその関わりそのものを作品として表現されている。紙プレと発表プレゼンにおいて、素直に表現されていることは重要でした。今回、初の公開審査としました。審査の経緯はライブでご覧になった方はよくおわかりだと思いますが、審査員5名はそれぞれの立ち位置で、明解に作品を講評することができ、議論ができたと思います。この審査の過程が受賞者だけでなく、応募者の皆さんの今後の創作活動のヒントになれば幸いです。

田中右紀

佐賀大学 芸術地域デザイン学部 教授 陶磁造形作家

このコンペティションは、制作物の出来の善し悪し以上に、仕組みやムーブメントを含め、セラミクスが人間の暮らしにどのようにコミットしていくかに対する反応を求めていた。デザインの使命である機能性や豊かな暮らしの追求に加え、人間の感情、儚さ、魂に対する訴えまでも、その領域に含まれるところがセラミクス素材をメディアとする反応の面白いところだと思う。つまりセラミクスという素材が担う領域は、文明の始まりの記憶から、日本の暮らしとそれを支えた工芸、急速に浸透したモダニズム、ファッション、科学や先端技術、仮想現実と多岐にわたり、一つのコンペティションの中でこれらが競合することは特異なことであり、それがリアリティーとなるのだと思う。

ナガオカケンメイ

デザイン活動家 D&DEPARTMENT ディレクター

祈りの時代へ
まずは受賞したみなさん、おめでとうございます。そして思います。このコロナウイルスによる生活全体を考え直すいま、ものは、セラミックは、デザインはどこへ向かえばいいのか、という答えが、受賞されたみなさんや、エントリー頂いた多くのみなさんからとても敏感に感じ取れました。それは何か大切なものとの強い繋がりで生まれた発想のように感じました。そしてそこにはこれまでにない「祈り」のような行為と紐づいていると思いました。それらは社会に商品として放たれても、活躍する場所をしっかり意識して、人々の暮らしと密接に結びつきながらも、時に目に見えない思いを発するもの。みなさんの提言がこのコンペの質となり、未来への光となったと感じています。

萩原修

明星大学デザイン学部 教授 デザインディレクター

驚いたのは、セラミックという素材のデザインコンペであるのに、モノの質感や形状、色だけでなく、しくみを含めた提案がほとんどだったことです。とくに、グランプリと金賞の2点が、人が参加する体験の価値をメインにした内容であったことは、現代におけるデザインが、仕組みや体験を重視するようになってきたことと一致して、とても興味深いことでした。20代、30代という若い世代の人たちが自分ごととして、素材の特製を活かして、新しい価値を提案していたことに勇気をもらいました。直接お会いすることはできませんでしたが、この出会いを大切にしていきたいと思います。ありがとうございました。

宮脇伸歩

株式会社LIXIL LWT商品ブランド部 プロダクトデザイナー

今回の「出会い」のテーマは、様々なセラミックの可能性を見せてくれたと思います。生活の道具をはじめとして、玩具、ペット用、弔い用、公共、人を巻込んだプロジェクト、アーティスチックな作品、空間、地域興しなどなど様々な出会いを、その特性である、割れる、永遠に残る、透過、ろ過などを使って。公開審査も緊張感と手ごたえを感じることができました。十分ではなかった部分もあるかと思いますが、対面よりも突っ込んだ理解ができたようにも思えます。次またセラミックを通して、新たなテーマでの可能性の提案を楽しみにしたいと思います。