第2回 CLDA 2018 結果発表審査員総評

第1次審査員

浅井 裕雄

建築家、裕建築計画代表

今回も多くの作品が応募された。キッチンは暮らしの中心の一つ。そこに、セラミックスによる新しいアイディアに期待した。結果は、グランプリと金賞のないという厳しいものでした。「キッチン」に対してストレートな提案が少なく、周りの小物提案が多く、テーマに対する回答として消化不良だった。しかし、受賞作品を振り返ってみると、とても多様な答えが並んだと思う。それぞれの作品から、そこに登場する人々のライフスタイルが様々で、だんらんや一人の生活の一部であったり、都市的スケールから見るキッチンなど、セラミックスの可能性を広げていると言える。次回は、テーマを深く読み広がる提案が多く集まることを期待します。

後藤 規文

有限会社後藤デザインオフィス 代表取締役、プロダクトデザイナー

キッチンにはセラミックがありふれていて、その違和感のない掛け合わせから新鮮味のあるアイデアを生み出すことは難しかったようです。全体に雑貨的な作品が多く、提案性のあるものが少なかったのはそもそもの相性の良さが要因だったのかもしれません。ただ、現在のキッチンには時短調理やレシピ系情報など機能的な話題も多くあり、多様な食文化が混在する日本のキッチンにはデザイナーが貢献できる余地はまだまだ在ります。

田上 知之介

愛知県立芸術大学 准教授、セラミックデザイナー

多くの応募作品を前に、わたしたちの今の暮らしが見えてきました。狭小空間、孤食、ファストフード・・・。同時に、現代生活は本当に豊かなのだろうかと考えさせられました。そのような中、現代の生活空間や食生活のネガティブな部分を、肯定的に、あるいは明るく前向きに考えられた提案を評価しました。その一方で、既存の社会構造にとらわれずに生活そのものをほんの少し豊かで楽しい方向に変化させるような提案や、めまぐるしく変化していく現代社会において変わる必要のない美しさやものごとにフォーカスした提案が非常に少なかったことが残念でした。

萩原 修

明星大学デザイン学部 教授、デザインディレクター

セラミックという素材から考えるデザインの面白さと難しさを感じた審査会であった。一次審査は、資料によるものであり、素材の魅力や特性がなかなか伝わってこない中で、どう判断すればいいのか悩んだ。実際の住空間や生活を捉え、それにふさわしい道具を提案しているものと、素材の魅力や使い方の可能性から考えていたものと別れていた印象だ。最終的には、これからの暮らしを楽しくする、美しくする、新しくする、可能性のある提案を選んだ。

日野 明子

クラフトバイヤー

今回、一次審査を担当しましたが、正直、難儀しました。実物で審査するクラフトコンペと違い、図面での審査は難しかったですが、図面やデッサンの上でも、やる気や熱意の量は解ります。上手い下手、優秀かどうかだけでなく、応募する以上、紙の上から熱意を感じられるものを期待したいです。
応募作品は<食卓上>か<キッチン空間>の二択のような応募作品群でした。<食卓上>のものは、いかにもありそうなものが多く、こじんまりしていました。もし、アイデアは平凡でも、<セラミックの特性>に対しての知識への意欲が感じられれば、評価は違ったと思います。<キッチン空間>に関しても、ただのデザインであって、新しい発想が感じられるものは少なかったです。「コンペだったら何にでも出す」のではなく、主催者が第一に掲げてる「セラミックの可能性」を感じさせるアイデアがあったり、「リアルなセラミック産業との関わり」があっても良かったと思います。キッチンの構造に関わるパーツなども出てきたら、今回の審査に広がりをがんじられたかもしれません。応募した皆さんが、今回の応募をきっかけに、セラミックに対して、より貪欲に挑んでいただけることを期待します。

第2次審査員

阪本 やすき

白山陶器株式会社 デザイン部長、陶磁器デザイナー

募集テーマに正面から取り組んだユニークなキッチンの提案から、種々のセラミックの素材特性を活かした調理器具や食器など多種多彩な作品が寄せられ、このコンペの特性がよく表れた応募状況でした。モデル製作の面ではハードルの高いテーマであった様で、それぞれに苦労の跡がうかがえましたが「囲炉裏KITCHEN」は古来の囲炉裏を新たなセラミック素材の特性を活かし、ポータブルなものに仕立てる事で現代の生活空間に再提示しようとする試みです。実素材モデルの完成度と程よい存在感にも好感を持ちました。

長井 千春

愛知県立芸術大学 准教授、セラミックデザイナー

縄文土器から煮炊きや保存を担った陶器は、現代のキッチンではどのように活躍してくれるのか。今回のテーマ「キッチン」では、食を司る場において、陶磁器が従来の役割だけでなく未来への可能性を示唆するデザイン提案を期待しました。しかし、前テーマ「あかり」に比べ、現実的で具体的な段取りをイメージさせる食空間であったため、応募者の想像力に少しブレーキが掛かったのかもしれません。残念ながらグランプリと金賞は選出されませんでしたが、「PAC」、「ルーフキッチン」など、場としてのキッチンとセラミックの新たな関係を提案するデザインを、私は特に評価しました。

ナガオカケンメイ

デザイン活動家、京都造形芸術大学教授、武蔵野美術大学客員教授

核家族化、シングル、シェア、そして、田舎暮らし、ホームレス化など、時代の変化によって台所、キッチンのあり方が変わってきています。今回はキッチンそのものというより、キッチンで使う道具の提案が多く、これは一見、テーマの見誤りと捉えそうになりながらも、そこにも時代の表現としての何かが見え隠れした審査でした。例えば、「文房具の横に置ける調味料入れ」のような、あらゆるところがキッチンである、という作品があったりしたのも、その時代ごとに生き生活する現代人のリアリティだとも感じ、審査する側にも、現代のキッチンそのものの捉え方自体を、前もって議論するなどの時間が大切だと話し合いしました。今回の審査に関わらせて頂き、改めて、セラミックの「自在性」という可能性を時代の移り変わりとともに感じました。

中村 好文

建築家、家具デザイナー

今回、ほとんどの応募作品がキッチンまわりの雑貨・小物だったことに、
審査員のひとりとして大きな失望感と無力感を覚えました。キッチンに関して並々ならぬ関心を抱いている建築家
としては、いわゆるファンシー・グッズ的な小振りの作品ではなく、セラミックならではの特
色を生かしたキッチンの未来形の提案に巡り会えることを期待していたからです。応募要項の「くらしを彩るキッチン」の「彩る」という言葉が、応募者の気持ちを雑貨・小物に向かわせたのではないかという疑念もチラリと脳裏をかすめます。

宮脇 伸歩

株式会社LIXIL LHTデザインセンター チーフデザイナー、プロダクトデザイナー

キッチンというテーマに対して、セラミックでどういう提案がされるのか、大きな期待がありました。
結果、食器や七輪の類いの小物雑貨系の提案が多く提案されました。少々残念なところはありましたが、いずれの提案もこれからの「食」に対する皆さんの考えが表現されており、良い意味での「個食」の在り方を考えさせられました。その中でも伝統と今の暮らしを前向きにとらえた「囲炉裏KITCHEN」は、セラミックならではの屋外も視野に入れた食の場として評価されます。

審査総括

友岡 秀秋

CLDA開催委員長、愛知県立芸術大学 教授、プロダクトデザイナー

第2回CERAMIC LIFE DESIGN AWARD 2018 は、関係者の方々の多大なる御協力により遂行することが出来ました。
「くらしを彩るキッチン」というテーマには、曖昧さの中にこそ様々な可能性と柔軟な発想や多様な視点を見出せるのではないかという思いがありました。
ただ今回はグランプリと金賞は該当者なしという結果となりましたが、こうした課題も今後の開催に向けて、より充実したデザインコンペに育てて行く為の大切なプロセスだと捉え取り組んで参ります。
そうした取り組みの一環として、入賞入選作品等のアーカイブサイト構築や、色んな接点を持つことが重要ではないかとの考えから、個々のアイデアを一歩踏み込んで、face to faceで相互利用できる交流の場、自由で新しい発想が生まれる創造の場の提供等、確かな足跡を残して行けるような取り組みを初めております。関係者の皆様、今後とも御支援のほどよろしくお願いいたします。