第3回CLDA

受賞作品

金賞

土に還る

「土に還る」は、土を通じて出会いを生み出すCERAMICプロジェクトです。キーワードは“人は土から生まれて、土に還る”です。我が国では、死ぬことを“土に還る”と表現します。死を迎えた人の姿形がこの世から消えても、その魂は土に宿っているという思想です。このプロジェクトには、生家のお墓をまとめた経験が大きく影響しています。山に点在する古いお墓には、骨壺もありませんでした。そこで、お墓の下から土を掘り、新しいお墓の下に埋めました。この経験から、土にはそこで暮らした人の、魂や思い出が眠っている感覚を強く持ちました。プロジェクト「土に還る」では、人生の思い出を紐解き、記憶の糸を手繰り寄せます。そして、心に残る大切な思い出や先祖の魂を手にとるようにして、素材となる土を集めます。その土を素材に、人生という物語の登場人物を、作り出します。作るものには、あの日のドラマが宿り、時空を超えて再び動き出します。

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布下 翔碁 Shogo Nunoshita

  • 1990年生まれ
  • 学生
  • 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程工芸研究領域(陶芸)在籍
  • 東京都

審査員コメント

私は募集時のメッセージで、「出会いをテーマにして、セラミックという素材の作り方や、できた製品がどういう関わりをし、効果を発揮するのか、様々なアイデアが提案されることを期待しています。」と言いました。思いがこもった土の物語を紡ぎ、その土で表現するプロジェクトは、私の期待を超える感動を与えてくれました。応募時は「死を弔う」ものでしたが、そこに執着しているわけではなくいろいろな思いを形にして残すことまで広がっていて、すがすがしい気持ちにもなりました。これからこのプロジェクトはまだまだ続き、発展していくことでしょう。人の思いを繋いでいくことを期待しています。またそこにセラミックがあることをうれしく思います。

宮脇伸歩